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ロンドンブックフェア報告
4月13日~21日まで、ロンドンブックフェアに参加をしてきました。その時の報告をいたします。さらに詳しい内容に関心がある方は、ご連絡をください。浅田。

【ロンドンブックフェアのレポート】

■2008年4月14日~16日 開催:ロンドン市内 アールズコートにて 

●はじめに
国際ブックフェアへの参加は、3年前の北京以来だから久しぶりである。それまでアメリカブックフェアに2回、北京ブックフェアに2回、参加をしてきた。出版のマーケティングと企画の国際的な汎用性でアメリカを見、世界で最も成長していると言われる中国出版界との付き合いをするために、参加をし、人脈をつくって来た。
両国には、出版業界の友人、知人ができたが、ビジネスのほうでは出版企画の翻訳権売買にとどまってきた。
当初は、アメリカ出版業界にはいっていった。1998年頃からアプローチをはじめ、数社の出版社本社を訪問して、当社がアメリカで本を出すときの流通を確保した。
そして、日本の著者で、アメリカで本を出したい、という会社を2社見つけ、2001年8月15日に㈱国際出版企画、International Publishing&Planning Inc. という会社をカリフルニアに設立した。
9.11はその翌月に起こった。まさに、晴天の霹靂で、2社のお客さんは「しばらく様子を見ます」と言われて、来ていた話は実質的にキャンセルになって、アメリカでの国際自費出版というビジネスは頓挫してしまった。翻訳権の売買は5件程度にとどまってしまった。
その後、中国出版業界へ入っていったのであった。
中国では、いままで約20件ほどの翻訳出版権を扱ってきた。しかし、ほんとうのねらいは、中国での社史のビジネスの見通しと、中国向けの国際自費出版にむけての人脈を作ることである。
米国とのビジネスは途絶えてしまったが、中国とのビジネスはいまも続いている。2010年に上海万博が終わったら、本格的にデジタルのヘリテージサービスで中国進出を始めたいと考えている。

●そのような中での英国ブックフェアについて 
今回の最大の目的は、

1)しばらく先進国のブックフェアから遠ざかっていたので、自分の目で出版先進国の動向を確かめたい。それでもって、今後の出版文化社としての出版活動の方向性を考えたい

2)いい翻訳出版できる企画があれば、オプションをとる。

3)中東の出版業界が今年の特別開催企画になっており、同出版業界の現状の把握をしたい。あまりよくない意味で注目されている中東の、日本での今後の出版の見通しなどを考えるため。

●今年の成果 

1)についてであるが、

A:英米の出版業界はまだ書籍中心 
 日本ではデジタル出版が急速に普及しており、一定のマーケットを作ってきている。その余波で書籍出版が厳しさを増しているが、英米の出版業界はまだ書籍出版を一生懸命にしている、というのが驚きと感想だ。英語のありがたさである。マーケットは世界的にあり、年々その需要は増すばかりである。欧米のマーケットは一体化しつつあり、欧米、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどの英語圏をひとつのマーケットとして出版活動を行っており、それらをひとつのエリアとして流通を担っている会社がいくつか出展していた。そういう会社は、2年前の米国ブックフェアにもあったが、それらの数が増え、規模が大きくなっている。それらの会社は、自社をとおして本を英語圏の世界に流通させられることをアピールし、顧客獲得に躍起であった。顧客とは出版社である。出版者の依頼を受けて、流通を請け負うというわけだ。

そして、上記のマーケットに加えて、今後台頭することが確実であり、かつ世界最大のマーケットになる可能性が高いインドが控えている。いよいよ眠れる巨像の時代がくる、ということだが、英語圏の出版業界としては、まだインド国内の出版マーケットが整備されていないため、市場としては加えられていないようだ。しかし、それは確実に到来する世界最大の英語マーケットなのである。「英語はいいなー、市場がでかくて」というのが今のところの偽らざる感想だ。

しかも、である。これから台頭してくる英語マーケットは、まだ中進国が多い。よって、デジタルデバイスよりも、やはり本なのである。ハードウエアとしての本が売れる。

英米の出版社は、まだまだ書籍が売れる、という確信をもっているのは、こういう市場の底辺があるからではないか。あるいは、まだ本が売れる、マーケットは大きくなる、という感触をもっているからではないか。まだ、本が売れると考えていることは間違いないが、足下はというと、書籍マーケットの伸び率が1~2%程度に縮んでおり、米国の世界最大の書店・バーンズ&ノーブルも年々伸びてきた売上が頭打ちの時代を迎えている。先行きはけっして明るくはない。

それでも、日本のような11年連続に売上が縮んでいるマーケットとは根本的に考え方が違う。逆に、欧米出版業界のデジタルコンテンツについての対応がBFを見る限りは、遅れているように思った。ここでヨーロッパを一緒に考えてよいのか、という問題がある。英語圏ではないからだ。また、小さな国がたくさん集まってできているのがEUだ。このマーケットはどうなっているのか、とみて見ると、英語圏以外の出版社も多く出展してはいたが、小さかった。ドイツのベルテルスマンは、いまや世界最大の出版会社だ。ここはさすがに大きい。しかし、ベルテはドイツの出版社の枠を超え、英語での出版案内を中心にしていた。そうだろうと思う。

それ以外の出版社もあった。オランダやベルギーやトルコ・・・だが、それぞれは小さなブースであって、その言葉に通じる人たちしか読めない本だから、そういう人しか集まっていなかった。EUは貨幣では統合されたが、言葉での統合は難しく、このまま行くと各々の出版業界はまことに小さな物になるしかなくなるだろう。

さて、電子化が進む日本である。いま、苦しんでいる日本の出版業界が、技術的にはここでリードできるかもしれない。日本は、携帯電話を初めとする電子機器の普及がすすみ、デジタルコンテンツへの対応が早い。ここをがんばって開発すれば、世界に先駆けてデジタルコンテンツの業界をリードできるかもしれない。デジタルコンテンツには国境は低い。社史がDVDやWEBになって来ているように、出版をデジタルで積極的に開発することで、いまの日本語だけのマーケットではなくなってくるのではないか。デジタルの翻訳はまだ、品質は不十分だが、これも時間の問題である。いずれ、各々がもっている携帯電話を通じて、目の前にいる異国の人と話をすれば、通訳なしで自国語で話ができるようになるだろうし、他国の本をダウンロードして、自国語に変えてすぐに読める、というようなことにもなるはずだ。そうなると、他国の人々にも関心をもってもらえるコンテンツをどれだけたくさんもてるか、それにかかってくる。そのように思えてならない。

帰途の列車の中で、日本人女性で、バージン航空の機内誌を作っているという女性にあった。彼女は福岡県出身で、ロンドンに住んで14年。日産に勤めていたが、最近、リストラがはげしく、その編集会社に移ったという。そこでいわれていることは、日本の作家の海外での人気が高い、ということ。それと、英米出版社の書籍販売の苦戦ぶりである。

傍目にはわからないほどに、中では苦しんでいる、らしい。彼女は出版業界ではまだ1年にならないので、情報は不確かで、どうしても感性的であろうと思う。今後のデジタルへの対応が難しいと漏らしていた。

B:環境関係のテーマを専門に扱っている出版社と知り合いになった。
  ZEDブックスというロンドンにある出版社は、環境関係の出版物を中心に扱っている出版社の流通会社。その中の取り扱い書籍で、子供向けと大人向けに翻訳出版できそうな面白そうな本がいくつかあったので、見本を送ってくれるように依頼をした。わかりやすく環境について語っている本がないか、というのは、本をハンティングするひとつの目標であった。ブックフェアを回ってみて、少なくない出版社が環境関係を扱っていることはわかった。しかし、ほとんどが大学教授が書いた学生のテキストであった。それなら別段、日本でもコンテンツは手にはいる。いや、ぎゃくに環境問題なら日本のほうが進んでいると言ってよい分野もあろう。しかし、大衆相手や、子供向けの啓蒙書で、バイブルになるような本は世界的に見て、まだない。『地球の秘密』もその一つの候補であることは間違いないが、いろいろあるので、一般人にとにかくわかりやすい環境の本を探したい、と考えていた。環境をテーマに専門的に突出している出版社は、BFで見る限り、たった1社であった。しかも、見逃してしまいそうな小さなブースであったので、見つけたときは安堵した。

まずは、3,4冊の本を送ってくれるように依頼したので、楽しみに待ちたい。

ちなみに、セールスマネージャーの男性・デービッド氏の夫人は日本人だといっていた。

帰朝後、連絡を取り合って、出版の話を詰めましょう、ということになっている。

C:日本の出版業界の影は年々薄くなっていく
 1980年代後半から前半に掛けては、欧米のメディアでも日本がよく取り上げれた。いまでは、それが中国になっており、中国に関する出版物は、欧米の出版業界でたくさん出版されていた。日本物で見つかったのは、デザインの分野と建築の分野と、マンガ。マンガはもう国際語になっているので、論をまたない。英米にもマンガ専門の出版社があり、日本物と自国のオリジナル作家のマンガも出している。デザインでは、グラフィックと建築分野でのデザインで、日本の建築物と建築家を取り上げていた物が散見された。

中国、韓国の出版協会は出展しており、いくつかの出版者が集まって出展しているブースも見つかったが、日本の出版業界の出展はひとつも無かった。業界自体が元気が無く、それどころではない、ということだろうか。陰は薄くなっていることをひしひしと感じた。

D:デジタルコンテンツの出版活動は、まだ著についたばかり
デジタル出版の進歩がどれほどに進んでいるか、というのは、今回の最大の関心事であったが、これは驚くほどに、影響が小さかった。また、ブースのエリアとしても小さい。欧米ではまだ、本気でそちらのほうのマーケット開発を考えているとは思えなかった。

デジタルコンテンツを流通させる会社は、10社ほど出ていた。それぞれは自社のコンテンツの販売技術を紹介していたが、小さなブースで会社としての対応も、十分には思えなかった。世界的な本の販売をしている会社でも、WEB上で45カ国の本の販売をしているが、書籍だけであった。先々には、デジタルコンテンツを売りたい、アマゾンのような会社になりたい、と鼻息は荒いが、まだまだこれからだった。

そういった中で、ひとつ面白かったのは、書籍のスキャニングを自動でする機械だった。書籍の本文ページを吸盤のような物でめくり、1ページずつスキャンをして、データとして取り込む。機械には本を置くだけ、というしろものだが、たしかに手間を省いて便利そうにも見えたが、機械購入代金が700万円という費用対効果を考えると、まだ時期尚早であるように思った。

E:社史の会社とは連絡つかなかった
 当社の英文社史研究会で英国の社史の会社との連絡がついたそうだが、渡英の直前に宛先を知って、すぐにメールを送ったが、先方からの連絡はついに無かった。本社所在地はケンブリッジで、ロンドンからは車で約4時間。遠いので、訪問するほどの時間はとれていない。また、もし、ブックフェアに関係者が来るなら面談をしたい、という依頼をしたが、誰もきていないのだろううか、それについての返事が来なかったので、今回の面談はできなかった。

 次回に機会があれば、もっとよく準備をして、訪問などの取り組みをしたいと思う。

●中東の出版マーケットについて 

大きなブースから、小さなブースまでさまざまな出版社が出ていたり、国の出版協会が自国の出版社の本を預かって、出展していたりなど、積極的な出店が見られた。しかし、さほど、人が集まっている様子ではなかった。広いブースで、人の流れをぼんやりと見ている3人の男性若者が目に付いた。イエメンの出版協会だった。

中東は特別開催なので、今回のBFのめだまのひとつであった。しかし、それは現在、世界から差別的な目で見られている中東に対する英国の寛大さであり、同時に、言論の自由を保障されていない国の出版業界を支援する意味もあるだろう。しかも、3年前にロンドンテロがあったわけである。その傷が癒えない英国でどれほどお客さんと関心を集めら得れるだろうか、というのはひとつの関心事であった。

小生にしても、中東の出版業界についてはまったく知識を持ち合わせていない。ほんとうに資本、経済的に独立した出版社が機能しているのだろうか、という素朴な疑問から入っていった。

まず、最大の出店ブースはエジプトだった。「あなたの国の本の中で、ベストセラー、ロングセラーについて教えてほしい。特に、ビジネスマン向け、若者向けの本があれば」
と問いかけてみたら、中から30歳前の男性が出てきた。しばらく考えて、難しい・・・といいながら、紹介してくれたのは自国の歴史をイラストをたくさん入れて紹介している本だった。他に出してきたのは、子供向けの絵本、ああそう・・・、とあえてそっけない態度で、他にはないの? と聞いてみる。どういう本が欲しいんだ、と再度確認するので、前述のことを言うと、いや、それは難しい、と展示物のウラに引っ込んでしまった。やはり国家として取り組んでいる出版社であって、言論の自由が十分に守られているわけではない、というのが、のちほど英国人に聞いた話である。

思い返してみると、サダト大統領がパレード中に暗殺されて、かれこれ27,8年になるだろうか。そのあとを継いだのは副大統領だったムバラク氏。暗殺はイスラエルの仕業だ、と当時の新聞は伝えていたが、ムバラク氏の犯罪説も一部の人から流れた。仮にそうではなくても、同じ大統領が30年近く政権のトップに座ると、どういうことが内部で起こっており、それを糾弾しようとするマスコミ、検察関係は相当な覚悟が必要だろう。

やはり、こういう国では言論と出版の自由、という2大テーマがまだ整っていない。ましてやエジプトですら、である。サウジアラビアと並んで、西側諸国に近い国である。他の中東国は推して知るべしと言ってよいのではないか。

そんなことをつらつら考えると、ほかの中東各国のブースを回る意欲も萎えてしまった。アラブ首長国連邦、サウヂアラビアを回ってみたが、同じ質問に出てくる本は、やはり自国の歴史を誇らしげに伝える本と絵本。そこまででアラブ他国の出版社ブースには行かなくした。それでなくても、時間は惜しいのである。

成果物としては、先の環境関係の本と、他にも翻訳出版できそうな企画、とくに欧米芸能著名人の自伝、伝記にはもしかしたらいけるかも・・・というような本もありそうだ。他にも、集めて、日本へ大きな箱で送付した。これらを紐解いて、よりよい企画を考えたいと思っている。

                                                  以上 浅田厚志
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